<< August 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 >>
<< キャラメル | main | 雨宿り >>

花曇りの日曜

演劇の世界にいると、なんだか曜日感覚がすっかり曖昧になってしまうことがある。
今朝も、あ、日曜日だ、と気がつくのに随分時間がかかってしまった。
公演が終わってから、バタバタとしているようなのっそりとしているような、浮遊感の抜けきらない数日を過していたのだが、今日は偶然にも大変日曜日らしい日曜日を過すこととなった。
前の晩から仕込んでおいたポトフで、某氏と昼食をとり、玉川上水公園を通過して駅へ。
公園の桜はまさに花盛りで、灰色の曇り空をふんわり笑い飛ばすかのように咲き誇っていた。

桜の花の色というものは、記憶の中のそれよりも、いくぶん薄紅の塩梅が違っているように感じる。一年越しで見る度に、新しい春のたんびに、そう感じるのだ。
記憶の中の桜は、甘やかな思い出や、苦い思い出に加筆されて、薄紅色の紅具合が濃くなったり、白粉を乗せたように白さが増していたりするらしい。
あの、なんともいえない淡い色調は、私の脳裏にはなかなか正確には焼きつかない仕組みのようだ。
きっと、桜の色というものは、個々人の思い出によって紅の量が変わるものなのでしょう。

そんな風に、過去の桜を少し思い出しながら、そして今年みた桜がどんなに地味な色でもけして忘れまいと胸に刻みながら、花曇りの空の下で駅のベンチに座るひと時。
私は、小さな幸福を噛みしめた。
また、来年咲けばいい。
春は、何度でも巡ってくるのだから。
幸福は主観だ。
私は今、誰に笑われてもいい。満開の桜に笑われても構わない。

ガタゴト進むおもちゃみたいな世田谷線に揺られ、小さな遠出をした。
小さな店で君と奇跡的な邂逅を果たし、夕暮れ時には宇宙についてのお話を見た。
夕食には春らしく、貝類をバターと醤油で焼いて賞味し、熱気で渇いた喉を今年最初のアイスティーで潤した。

これが、この日曜日の全て。
夜桜は、ひとりで見た。
悪くない夜だった。

profile * 小夏の呟き * 02:51 * comments(0) * trackbacks(0)

コメント

コメントする









トラックバック

このページの先頭へ